TDDを真面目にやってみて気付いたこと

18th Mar, 2010 | development tdd

何を今更、なことかもしれないないのだけど、もしかしたらこれを知ることでTDD(Test-driven development)をやることのハードルが一気に下がる人がいるかな、と思ってメモ。 特に、ある程度プログラマとして経験があるけど、どうもTDDは慣れないという人向き。


“TDDとは、TDD以前に脳内や機上でやっていたことをコードに落とすことに過ぎない”

このことが解ってから、TDDをするのが一気に苦痛ではなくなり、むしろ楽しくなった。

TDDでなくても、コーディングをするとき、temporaryなテストコードを書いたり、目視でのチェックはしたりするものだろう。たとえば、一時的に変数の値をハードコードして挙動を変えてみて、それを目視で確認したり、printデバッグとかもその一部だ。

つまり、このtemporaryなコードや目視している部分をpermanentにするのがTDDで書くテストコードだということがわかった。

TDDであろうが、なかろうが、考えないといけないこと、やらないといけないことはたいして変わらない。たいして変わらないなら、テストコード書いておいた方が得。

テストコードがあれば、チーム内で技術や知識の共有もテストコードを通じてしやすくなるし、コードレビューだって、コードとテストがセットの方がやりやすいだとやりやすい。

単純に、テストファーストでやらないのは色々と損だよね。って感じ。


後は、おまけみたいなものなんだけど、自分でTDDしたり、人のTDDでしたコードを見たりして、いくつか思ったことをメモ。

1. TDDでコードや設計がきれいになるのは、プログラマをさぼらせないから

いいコードでないとテストが書きにいので、「いいコードを書くのをさぼれない」ってことになって、結果的にきれいなコードにはなりやすい。人はさぼるものなので、これ重要。

2. TDDのUnit Testは自作自演

TDDでは、テストコードを書く人と実際のコードを書く人は通常同じなので、どうしても自分の都合のよいテストコードを書いてしまいがち。また、仕様を誤解してても、その誤解したままのテストコードになって、テストは通る。もちろん、自作自演だからこそ、1.の恩恵を得れる。

3. ある程度の範囲に影響するリファクタリング時の動作の保証は微妙

Unit Testは、どちらかというとホワイトボックス的なテストなので、リファクタリング時にもあわせて変えないといけないことも多い。そのため、ある程度の範囲を直す場合、Unit Testだけでは不十分。動作の保証という意味ではブラックボックス的なcucumberみたいなテストも組み合わせないと厳しい。(もちろん自動化以外のテストも必要だけど、これは別の話)

これはTDDってよりUnit Testの話か。

4. テスト自体の知識も大切

当然なんだけど、TDDをするようなツールの知識だけではなくて、ある程度のテストの知識がないと良いテストは書けない=良いTDDはできない。テストの知識ってのはCOBOLの時代(もっと前かな)から変わってないような知識。境界値チェックとか(ちなみに、こういうの勉強するのに情報処理試験の勉強ってなかなか侮れない)。

単純な例を挙げると、ある条件での平均値を求める、と言ったコードに対するテストで、テストコードで使うテストデータがその「ある条件」のものしか用意してなく、「ある条件」以外のものを用意してないといったケース。この場合実際のコードの方に「ある条件」が抜けていてもテストは通ってしまう。超基本なんだけど、それすらできてないテストを見かける。

単体テスト仕様書を何百枚も手書きしていた世代のノウハウをゲットすべき(関係ないけど、Key-Value Storeな方面でもあの世代のノウハウって役に立ちそう)。

ちょっと逸れるけども、知識どうこうではなくて、手を抜いてしまっているダメなテストももちろんダメ。

たとえば、Rubyとrspecでの例になってしまうが、 foo.should_not be_nil を安易に使いすぎるとか。foo.should == something とちゃんと書けるようなケースなのに、should_not be_nil で手を抜く。

他にも、Mock/Stubを使いすぎて、何もテストしてない状態になっている、とか。笑い話みたいだけどたまにある。

こういうのは「自分が何をテストしているのか」というのをしっかり意識しないと陥りがち。

そういえば、「TDDは品質のためじゃない!」 と、でかい声で言ってる人でも、多分このぐらいのことは当然やってる人たちなんだろうけど、なんか誤解は与えそうだね。とは思った。



RspecとCucumberでTDD/BDDを極める (The Rspec Bookの紹介)

17th Feb, 2010 | development ruby rspec cucumber tdd bdd book

本の紹介第2弾。少し前、Twitter上でTDD/BDDについて盛り上がっていたので、この本を紹介してみたくなった。

The Rspec Book: Behaviour Driven Development With Rspec, Cucumber, and Friends」という本。

この本は、RspecCucumberを使い、どう考え、どうシステムを作っていくか、というをチュートリアルを交えながら紹介する構成になっている。

ただUnit Testを紹介するだけではなく、Unit TestツールであるRspecに、BDDツールであるCucumberを組み合わせて使うことで、Unit Testでカバーできない部分をCucumberで補い開発をする、というところがこの本の肝になっている。

この本を読み、実践することで、Unit Test*だけ*を書いてシステムを作っているときのモヤモヤ感をかなり解消できる。また、RspecもCucumberも知っているけど、両方をどうやって使っていくかよくわからない、という人もこの本を読むとかなりすっきりできるのでお勧め。

以下に、自分なりに理解したところを書いておく。本の内容から少し離れているところもあるので、詳しくは本を読んでみて欲しい。

また、ここでは触れないが、この本では、RspecとCucumberの基本的な使い方や、webratseleniumなどのWeb系のテストツールと一緒に使う方法や、Railsとの組み合わせ方なども含まれているので、Rubyでのテストに関するかなりの部分がカバーされていてかなりお得な作りになっている。

Unit Testとは

改めて書くまでもなく、Unit Testというのは(自動化するかどうかは関係なく)、とにかくコンポーネントとしての精度を高めるものである。また、Unit Testの優れている点として、Unit Testは「テスト」だけのためではなく、「設計」のためであるということが言える。テストを書くということ自体が設計となる。テストが書きにくい=設計が悪い、ということでもあるので、テストをきれいに書くことで、自然といい設計になるように導いてくれる。

しかし、Unit Testは、コンポーネント単位での動作は保証するが、それらを組み合わせたときに、最終的にシステムがどのような物になるか、ということまでは基本的保証しない。そして、Unit Testは、基本的にプログラマの自作自演ということもあり、外部から、システムとして見たときにどう動くかということも保証しない。また、非エンジニアの人にどういうシステムか、というのを説明するのにもUnit Testは向いていない。

これらは別にUnit Testの欠点というわけではなくて、Unit Testはそういうものなのである。

「Unit Testだけ」で開発するモヤモヤ

Unit Testでカバーできる範囲は「設計」を設計としてそのままコードに落とし、そしてそれがそのままテストにもなり、自動化もでき、再利用もできる。

しかし、Unit Testの対象外である、システムを外部から見たときの振る舞いに関して、設計やテストはコード化されずに、BTSや色々なツールで管理しても、結局「使い捨て」になりやすい。ドキュメントをコードとは別に書いても、プロジェクトが進むごとにコードとどんどん乖離していってしまう。

今まで、この部分を解消するためにいろいろなツールやプラクティスを試してみたが、どうも自分的にしっくりくるのがなかった。それは、おそらく、そういうものの多くは、ドキュメント(紙)ベースなものが多いからだと思っている。やはりプログラマとしては、そこも「コード」で定義したいし、コードに書いてあることをドキュメントにも書くということはしたくない。

Cucumberとは

このモヤモヤを解決してくるのがCucumberというツールと、それを使ったプラクティスになる。Cucumberでは、外側の設計(とテスト)をコードに落とすものである。Cucumberを使うと、ユーザから見た動作に関しての設計を、そのままコードにすることができる。Unit Testでコンポーネントに対してテストを書くのと同じ構図になる。

また、Cucumberは非常に自然言語に近い形で書けるので、非エンジニアの人が読むことが(場合によっては書くことも)可能だ。

RspecとCucumberの連携

RspecとCucumberは、それぞれ単体で使っても、もちろん便利なのだが、この本では、それらを組み合わせることで、さらに強固で柔軟なシステムを作ることができると説明している。

コンポーネントレベルでの動作の保証にはRspecを使い、ユーザから見た動作に関しての保証にはCucumberを使うということになる。

この本では、1つの機能毎に下記の各フェーズを繰り返し開発を進めて行くことを提案している。

  1. Cucumberを使い外部の設計(=テスト)を書く - この段階では実装がないのでCucumberに実行結果はRed(失敗)になる。
  2. Rspecを使い内部の設計(=テスト)をする - この段階では実装がないのでRspecを実行するとRedになる。
  3. Rspecが通るように実装する。この時点でRspecはGreen(成功)になる。
  4. Cucumberが通るようにCucumberの実装を書く。ここで、2-3で作った部分がうまく1.の設計にあわない場合、2.に戻る必要がある。場合によっては1.に戻る。

つまり、外側 (Red) - 内側 (Red) - 内側 (Green) - 外側 (Green) という順序で開発して行くことになる。

この手法は、非常にアジャイル開発とも相性がいい。上記の1から4の一回で作る機能の単位として、アジャイルの一つのユーザストーリはぴったり当てはまる。

本の入手方法

ここまで書いておいてなんなんだが、まだこの本は紙の本としては発売されてない。延期につぐ延期で、次の予定は2010/4になっている。しかしとりあえず現時点ではベータ版をPDFで買うことができる。上のリンクから買える。

一度購入しておくと、新しいベータ版が出る度にダウンロードできるので、個人的にはここ半年位楽しんでいる。英語だが、チュートリアル形式でコードも多いので英語にあまり自信がなくてもなんとかなるだろう。

Amazon日本でも紙の本の予約はできるみたい。